こんにちは、日本不動産株式会社の宇野です。
先日、札幌ドームの決算が発表され話題となりました。日本ハムファイターズという年間を通じて収益をもたらす「巨大なリピート顧客」を失った影響は甚大でしたが、ネーミングライツという大きなスポット収益やイベント開催で、数字上は黒字を確保したとのこと。
しかし、経営者の視点で見るべきは、来期以降の姿です。ネーミングライツのような一過性の売上がなくなった時、本当の収益力が問われることになります。
このニュースに触れ、私は前職時代の経験を思い出していました。
売上の7割が「計算できる」状態からスタートする強み
前職で私が勤務していた会社は、年間売上が約500億円規模でしたが、そのうちの6〜7割、つまり300億〜350億円は、毎年必ず購入してくれるリピートのお客様で構成されていました。
これはつまり、期が始まる時点で、売上の大半がある程度「見えている」状態からスタートできるということです。私たちのミッションは、「残りの150億〜200億円の売上を、いかにして上乗せしていくか」という、未来志向の戦略にフォーカスすることができました。この安定した基盤があったからこそ、思い切った挑戦も可能だったのです。
この経験から、私は「安定している企業とは、売上の半分程度は計算できる収益で組み立てられている企業だ」という持論を持っています。
「ストック型収益」と「フロー型収益」
これを経営用語に置き換えると、事業の収益は2種類に分けられます。
- ストック型収益(積み上げ式): 賃貸収入や管理料、サブスクリプションなど、継続的に安定して入ってくる収益。一度契約すれば、解約されない限り計算できる売上です。
- フロー型収益(都度発生式): 不動産売買や仲介、単発のイベントなど、一度きりの取引で発生する収益。収益性は高い場合もありますが、継続性はなく、見込みが立てにくいのが特徴です。
札幌ドームの例で言えば、ファイターズは「ストック型」、ネーミングライツや単発コンサートは「フロー型」と言えるでしょう。
我が社の現在地と、今後の戦略
翻って、私たち日本不動産の事業ポートフォリオを見てみると、面白いことに気づきます。
- ストック型: 不動産賃貸業(自社保有物件からの家賃収入)
- フロー型: 宿泊業、マンスリーマンション事業、不動産買取再販
現状、この2つの収益のバランスが、ちょうど半々くらいになっています。これは、事業の「安定性」と「成長性」を両立させる上で、非常に健全な状態だと自己評価しています。
今期は、宿泊業やマンスリーマンション事業という「フロー型」の売上が大きく伸びることが予想されます。これは会社が成長フェーズにある証拠であり、喜ばしいことです。
しかし、だからこそ、私は立ち止まって考えます。 フロー(成長)のアクセルを踏む時こそ、ストック(安定)の土台を固めることが何よりも重要だ、と。
好調な時だからこそ、来期以降を見据え、収益の基盤となる不動産賃貸業の強化にも、今まで以上にしっかりと取り組んでいく所存です。成長と安定、この両輪をバランス良く回し続けることこそが、持続可能な企業への唯一の道だと信じています。